愛しのマイガール
「……俺が、追いついてなかっただけだな」
静かに、声をこぼした。
るりはとっくに、ただ守られるだけの女の子じゃなかった。支えられるだけの存在じゃなくて、誰かを支えたいと願う側になろうとしていた。
なのに俺は、自分のほうがまだ、彼女の隣にふさわしい男になりきれていなかった。
「るり……」
彼女の手をそっと包み、額の熱をもう一度確かめる。
熱はまだ高い。でもその小さな身体が、かすかに指を握り返してくれた気がした。
「……遅くなって、ごめん」
これからは、もう一度ちゃんと向き合う。
これからは、ただ“守りたい”だけじゃなくて、
ちゃんと“隣で支え合いたい”と言えるようになりたい。
るりのまっすぐさに、自分の弱さから目を逸らさずに向き合いたい。
「次は俺が……きみに追いつく番だな」
誰に聞かせるでもなく呟いて、ただ静かにるりのそばに腰を下ろす。
「……ごめんな…」
彼女の額にもう一度、そっと手を当てる。
熱がまだ下がらないことが、やけに悔しかった。
その熱に、これまで気づけなかった自分の不甲斐なさが、まるで貼り付いているようだった。
「るり」
低く、静かに名前を呼ぶ。
「そんなに、ひとりで頑張らなくていい。……俺は、どこにも行かないから」
返事はなかった。
けれど彼女の眉間のしわが、少しだけ緩んだ気がした。
その夜、俺はずっとるりのそばを離れなかった。
誰も見ていない場所で、ただ黙って、額に手を添え続けた。
彼女への想いがゆっくりと、心の奥で新たな形になっていった。