愛しのマイガール
「……本当に、訴えられるんでしょうか。九条さんを」
ふいに出た問いに、天城さんは一瞬だけ視線を伏せたあと、淡々と答えた。
「可能です。これは感情的な対抗措置ではなく、法的に明確な根拠があります。ただし、“事実を証明する意思を持ち、主張を貫く”という前提が必要です」
その言葉は冷静だったけれど、どこか私の覚悟を試されているようにも感じた。
「……私は、戦いたいわけじゃありません。でも、自分が間違っていたと黙って認めることもしたくないんです」
声は震えなかった。けれど喉の奥に、小さな棘が刺さるような感覚があった。
「彼は、自分の婚約者のことも、私にも、嘘をついた。私はそれを知らないまま、大切だと思っていた関係を信じていました。……裏切られた側なのに、悪者にされようとしている」
深く息を吐き、私は言葉を絞り出す。
「だったら、ちゃんと声を出さなきゃって思うんです。もう自分のことを、誰かに勝手に決めさせたくないんです」
天城さんは一言も遮らなかった。相槌もなければ表情もない。ただ静かに私の言葉の終わりを見届けていた。
「承知しました。発言内容については後ほど陳述書に反映しておきます」
そう言って、彼は手元のタブレットに視線を戻した。まるで、「次に進みましょう」と言うように。