愛しのマイガール
「本日お越しいただいたのは、提出書類と証拠資料一式の最終確認のためです。既に受領済みのものを含め、再度ご確認いただいたうえで正式に訴訟に踏み切るか否かをご判断いただきます」
「……わかりました」
私はうなずき、差し出されたファイルに視線を落とした。そこには、私が差し出したすべての事実が整然と並んでいた。
スクリーンショット、メール、日記の断片、そして記憶の証言——
「当方としては、反訴の実行に足る証拠と証言が揃っていると判断しています。ただし、手続きが始まれば法廷での主張に発展する可能性もあります。精神的な負担が伴うことは、あらかじめご理解ください」
「はい……それでも、やります」
静かに、けれど迷いなくそう答えた私に、天城さんは一瞬だけまなざしを上げた。
その目には、やはり何の色もなかった。
「では、この場で正式な訴訟委任契約を結びます。こちらに署名をお願いします」
私はペンを取り、書類に名前を書き入れた。インクが紙に染みていく音が、やけに鮮明に響いた気がした。
それを確認すると、天城さんは再び事務的な口調で続けた。
「今後は証言の裏付けや事実関係の流れについて、順を追って確認してまいります。追ってご連絡差し上げますので、ご対応をお願いいたします」
「はい。……今日は、ありがとうございました」
私は軽く頭を下げて席を立った。けれど天城さんは、すでに次の資料に目を落としていて、その顔に変化はなかった。
エレベーターに乗り、ビルの外に出ると、冷たい風が頬をなでた。
月城邸の中とはまるで違う、現実の空気だった。