愛しのマイガール
紬ちゃんがにこりと笑ったのに釣られるように、そのお母さんもこちらを振り返る。
目が合った瞬間、お互いに「あ」と声にならない声をもらした。
(やっぱり……!あのときの人達だ)
お母さんの方も記憶を手繰るように少し目を細めてから、ふわりと微笑んだ。
「……こんにちは。以前も、お会いしましたよね?」
「あ……えっと、はい……」
お互い名前を知らないまま、それでも確かに顔を覚えているという、不思議な再会だった。
「ないてたおねえちゃんだ!」
「こ、こら!つーちゃん!」
お母さんがあわてて小さな娘の肩を抱き寄せる。
けれど女の子は無邪気に笑ったままで、私の顔をじっと見上げていた。
「何度もすみません………」
「い、いえ!全然」
私はなんとか笑って返したけれど、あの日の自分の顔を覚えられていたことが少しだけ恥ずかしかった。
「おねえちゃん、どうしてここにいるの?ホテルにすんでるようせいさんじゃなかったの?」
「よ、妖精さんっ?」
あまりに突飛な言葉に思わず聞き返すと、紬ちゃんは真剣な目でうなずいた。
「だって、ホテルにすんでて、きれいで、ないてたけど、かわいかったもん」
「つーちゃん、それは……」
お母さんが苦笑しながらたしなめるように肩をポンと叩く。けれどその顔にも、どこかあたたかな笑みが浮かんでいた。
「ごめんなさい、この子、ちょっと想像力が豊かで……最近日本に帰ってきたんですけど、こっちの絵本を気に入って色々読んでるうちに色んなことを覚えてしまって」
「な、なるほど……。けど、嬉しいです。妖精なんて、初めて言ってもらえました」
くすぐったいような気持ちになりながら、そう言うと、紬ちゃんが再び私に話しかけてくる。