愛しのマイガール

「少しだけ、さっきの絵を思い出すな」

「確かに……ちょっと、似てるかも」

赤と緑が滲むように皿の上で混ざり合う様子が、たしかにさっき見た抽象画と重なった。

「味もちょっと驚くかもよ。ここの料理、意外性があるから」

「意外性?」

「ああ。一見ただの組み合わせに見えても、食べてみると驚くほど相性がいい。たぶん、るりが好きそうな感じ」

そんなふうに、私のことをよく知ってくれている彼に、胸が少しだけ鳴った気がした。

私はフォークを手に取る。目の前の一皿をゆっくり口に運ぶと、やさしい酸味とオリーブの香り、そしてハーブの清涼感がふわりと広がった。

「……ほんとだ。ちょっとびっくりしたけど、美味しい」

「だよな。最初食べたとき、俺も同じこと言った」

ふたりで、くすりと笑う。

まるで、昔のままのやりとりみたいだった。でも昔とは違って——今は、この空気の中に、少しだけ大人びた沈黙が混じっている。

メインの料理が運ばれるまでのあいだ、窓の外を見ると、ガラス越しに見える木々が風に揺れていた。

「……こうして一緒に食事するの、久しぶりだね」

私がぽつりと言うと、ハルちゃんは軽く頷いた。

「ああ。ごめんな、なかなか一緒にいてやれなくて」

「大丈夫だよ。ハルちゃんがお仕事大変なの知ってるもん」

「そうか?じゃあ、寂しがってるのは俺だけか」

< 132 / 200 >

この作品をシェア

pagetop