愛しのマイガール
「少しだけ、さっきの絵を思い出すな」
「確かに……ちょっと、似てるかも」
赤と緑が滲むように皿の上で混ざり合う様子が、たしかにさっき見た抽象画と重なった。
「味もちょっと驚くかもよ。ここの料理、意外性があるから」
「意外性?」
「ああ。一見ただの組み合わせに見えても、食べてみると驚くほど相性がいい。たぶん、るりが好きそうな感じ」
そんなふうに、私のことをよく知ってくれている彼に、胸が少しだけ鳴った気がした。
私はフォークを手に取る。目の前の一皿をゆっくり口に運ぶと、やさしい酸味とオリーブの香り、そしてハーブの清涼感がふわりと広がった。
「……ほんとだ。ちょっとびっくりしたけど、美味しい」
「だよな。最初食べたとき、俺も同じこと言った」
ふたりで、くすりと笑う。
まるで、昔のままのやりとりみたいだった。でも昔とは違って——今は、この空気の中に、少しだけ大人びた沈黙が混じっている。
メインの料理が運ばれるまでのあいだ、窓の外を見ると、ガラス越しに見える木々が風に揺れていた。
「……こうして一緒に食事するの、久しぶりだね」
私がぽつりと言うと、ハルちゃんは軽く頷いた。
「ああ。ごめんな、なかなか一緒にいてやれなくて」
「大丈夫だよ。ハルちゃんがお仕事大変なの知ってるもん」
「そうか?じゃあ、寂しがってるのは俺だけか」