愛しのマイガール
———


翌日の午後、私は英子さんに付き添われて街へ出ていた。

「本日は婚約者教育の一環として、いくつかお店を見て回ります。贈答品の専門店や、ドレスサロンなどを予定しています」

淡々とした口調ながら、言葉の端々に責任感がにじんでいる。それなのに私は、いけないと知りつつもどこかうわの空な自分がいた。

(……恋してるって、言われちゃった…)

唐突なほどに真っ直ぐな声。誰よりも理知的で、誰にも媚びない人が、私だけを見てそう言ってくれた。

思い出すたび、心臓がきゅうっと音を立てそうになる。

恋人として見てほしい。惚れてほしい。ずっと欲しいと思ってる——
そんなふうに真剣に、熱をもって口説かれたのなんて生まれて初めてで。

(嘘みたい……)

でも、嘘じゃなかった。
ハルちゃんは、本気で私を想ってくれている。

(ハルちゃんみたいな完璧なひとにこんなに思われる資格……私にあるのかな)

うれしいのに、不安。
心が温かくなるのに、どこかで逃げ腰になってしまう自分がいる。

街の喧騒に思考を紛らせたくて、私は顔を上げた。

歩道には、週末の買い物客が行き交い、ビルのガラスに人影がいくつも映っている。すぐそばをすれ違うカップルの笑い声が、なぜか遠く聞こえた。


「まずは贈答品の専門店にまいります。月城家の親族筋にも好まれる、伝統工芸のラインナップが豊富な店です」

石神さんが手元のタブレットを見ながら、変わらぬ調子で告げる。

「はい……」

私は曖昧に頷きながら、英子さんの後に続いた。




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