愛しのマイガール
「うわああん! お兄ちゃぁん!」
私は兄の胸に縋りつき、声を上げて泣いた。
お兄ちゃんは驚いた顔で私を受け止めてくれていた。
「瑠璃!? どうした? 何があった?」
「う、ううぅ……」
「とにかく落ち着け。家、上がるぞ」
お兄ちゃんに肩を抱かれ、私は泣きじゃくりながら家の中へ戻った。そのままリビングまで歩いてソファに並んで腰掛ける。
「突然“助けて”なんて連絡きたかと思ったら、そんなに泣いて……いったい何があった?」
お兄ちゃんは、私にとって昔からヒーローみたいな存在だった。優しくて、でもちゃんと怒るときは怒ってくれて、少しうるさいくらいに干渉してくるところもあるけれど、いつだって一番頼りになる人だった。
どうしても耐えられなくなって、私はお兄ちゃんに連絡した。
そしたらすぐに来てくれた。
お兄ちゃんの腕の中で思いきり泣いたら、ようやく少しだけ気持ちを言葉にできた。
「……好きだったの。……信じてたのに、全部……嘘だった」
私は、これまでのことをぽつぽつと話し始めた。
付き合っていた人がいたこと。その人に婚約者がいたこと。
私はそんなこと、何も知らなかったこと。
何度も涙で言葉がつまって、うまく話せないところもあったけれど、全部伝えた。
お兄ちゃんは黙って話を聞いてくれ、話し終わったあと、静かに唇を結んで言った。
「……そいつ、名前は?」
「……榊翔真」
私がその名前を口にすると、お兄ちゃんの目が鋭くなった。
「……ふざけんな。そんなクズ、俺が完膚なきまでに叩き潰してやる…!」
お兄ちゃんの声には、はっきりと怒りがにじんでいた。でも私は、ふるふると首を振った。
「……もう、いい。私……これ以上、傷つきたくないの」
それでも、お兄ちゃんは私の言葉には答えず、スマホを取り出して、どこかに連絡を取り始めた。