愛しのマイガール
机上の資料に視線を落としたまま、天城の指先が一か所で止まった。
「すでに記者の一人に不自然な資金移動も確認済みだ。九条グループが関わっている可能性が高い。決定打とまでは言えねえが、動かぬ証拠にできる情報は追ってる」
「分かった」
俺はゆっくりと頷き、そして続けた。
「証拠が取れ次第、即座に動く。同時に関係取引先にも“月城のスタンス”を通達させる。『事実無根の個人攻撃に加担する場合、契約見直しの対象となる』ってな」
ここで、俺の中に静かな怒りが湧き上がった。
「……それでも、あの子を傷つけようとするなら」
拳に力を込め、静かに、しかし確固たる決意を込めて言った。
「月城を──いや、“俺を”敵に回すことが、どういう意味か教えてやる。誰であろうと、容赦はしない」
天城は一瞬だけ黙り、それから静かに息を吐いた。
「通達の文面は慎重に調整する。“名誉毀損や風評被害に関与した場合”という表現で法的に正当性を担保する。いいな」
「任せる」
それでいい。
俺が感情に揺れても、こいつはいつも変わらずに任務を果たす。共感も情けも口にはしない。だからこそ、確実に信頼できる。
俺は再びデスクの資料に目を戻し、心の中で誓った。
るりが前を向く限り、俺もその隣に立ち続ける。
優しいあの子を守りたい。でも、それだけじゃ足りない。
“隣に立ちたい”と言ったるりの意志を、俺は信じる。
だから俺は整える。
選べる場所を、進める道を、そして“何があっても奪わせない”覚悟を。
俺のやるべきことは、もう決まっている。