愛しのマイガール
言い終えた瞬間、会議室が静まり返る。間を置かず、席の奥からひとつ咳払いが聞こえた。
「専務、それは理想論では?世間では現在、彼女の名前と“騒動”は結びついています。その人物を表に出すなど、企業の顔として論外です」
保守的な幹部が口を開いた。“信用”という名の皮をかぶった、過去への縛り。
案の定こう来たかと、特に驚くことなく意見を聞く。
「たとえ内容が良くても、“誰が言ったか”で台無しになる。一部のメディアが再燃させれば、今度は我々が矢面に立たされる」
そんな声も続いた。
だがその空気を切るように、別の幹部が資料をめくりながら言った。
「……提案自体は、十分に検討に値するものです。実情とズレた理想論ではなく、具体的な改善案が出ている。社会貢献の“実効性”に目を向けた意見として、私は率直に評価できます」
比較的実務寄りの中堅層だ。派手さより現場を理解し、業務の中で成果を出してきた立場。
声に力はなくても、一定の重みがある。
その言葉に、周囲の雰囲気がわずかに揺らぐ。
そして、それを割くような、重く低い声が響いた。
「私からいいかな」
月城グループ代表、俺の父・月城卓臣。
父は目を伏せたまま、短く、静かに言い放った。