愛しのマイガール
会議は、その後も穏やかに進んでいった。私は何度か言葉を求められ、そのたびに自分なりの考えを伝えた。
受け入れられたかは分からない。けれど少なくとも、無視はされていなかった。それだけで安心できた。
会議が終わり、私はひと足先に退室する。「今日はありがとうございました」と静かに頭を下げ、部屋を後にした。
ガラス張りの廊下を歩きながら、軽く息を吐く。
緊張が、ようやく少しだけ和らいだ気がした。
社員たちの賑やかなフロアを抜け、受付を横目に本社ビルの通用口から外へ出る。ドアが閉まる音のあと、静かな夕方の風が髪を揺らした。
街はもう夜に向かっていた。
でも、ビルの上階にはまだいくつも灯りがともっている。
私はふと、そこで立ち止まる。
見上げたその高層のどこかに、ハルちゃんがいる。──そう思うと、胸がすっと熱くなった。
(……ここで、ハルちゃんは働いてるんだ)
彼の背負っているものがどれほど大きいのか。その一端に、ようやく触れられた気がした。
彼と同じ空間にいられた。ほんの少しだけど、同じ景色を見られた。
その事実が、じんわりと体の奥に沈んでいく。
「……当たり前みたいな顔して、出てくるんだな」
不意に背後から声がして、心臓が跳ねた。