愛しのマイガール


その夜、私は灯りを最小限にして、書斎にこもっていた。

手元のデスクライトだけが、小さな円を描くように資料を照らしている。

本当は明日以降のミーティングに向けて目を通しておくべき書類だったけれど、内容はまるで頭に入ってこなかった。

昼間聞いた言葉が、何度も頭の中で反芻されていた。

——足手纏い。

ただその一言が、心の奥深くまで突き刺さる。

あの人たちが言っていたように、私は“問題”を抱える存在になってしまったんだろうか。ハルちゃんの名前を背負いながら、彼の立場にまで傷をつけてしまうのではないか。

(……もう、誰にも頼らずにいた方がいいのかもしれない)

そう思った瞬間、胸の奥がぎゅっと締め付けられるように苦しくなった。

自分のせいで誰かに迷惑がかかることが、何より怖かった。

噂に傷ついたんじゃない。それによって、大切な人や、携わってきたプロジェクトの輪が少しずつ歪んでいくこと。その原因が自分であることが、辛くてたまらない。

大丈夫、頑張れる。何度そう繰り返しても、
感情の堤防は、音もなく崩れていった。


カタン、と手からペンが滑り落ちた音がして、次の瞬間、不意に頬を伝う温かいものに気づいた。

——泣いている。

気づかないうちに、静かに、確かに涙が落ちていた。

「…っ……」

誰にも見られていないのに、私はなぜか慌てて手の甲でそれをぬぐった。でも、止まらなかった。

どうしていいかわからなくて、口元を押さえながら声を殺す。

しゃくり上げる音さえ漏れないように、必死に喉を抑えて、それでもこぼれる涙にただ耐えるしかなかった。



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