愛しのマイガール
「……るり」
背後から、そっと名前を呼ばれる声がした。
静かで優しくて、けれど、どこか焦りがにじんでいる。その声に、私はびくりと肩を揺らした。
振り返ると、ハルちゃんが書斎のドアに立っていた。
「は、るちゃ……っ」
顔を見られたくなくて、とっさに視線をそらした。けれど彼はゆっくりと近づいてきて、何も言わず私の肩に手を添えた。
「るり……強くあろうとすることと、ひとりで耐えることは違うよ」
その低く穏やかな声が、胸の奥に染み込んでいく。
「だから……頼むから、一人で泣かないでくれ」
どこにも力の入っていないその言葉が、どうしようもないほど優しくて、私はふたたび涙をこぼした。
「……ごめん、なさい…私……迷惑ばっかりかけて……」
絞り出すように呟いた言葉に、ハルちゃんは静かに背中を撫でながら答えた。
「責められるべきは俺だ。約束しておきながら、きみの笑顔を守りきれなかった」
その声は重く、でも揺るぎない決意を帯びていた。
「君が役に立てていないなんて、そんなことは絶対にない。……君がいることで、俺はどれだけ支えられているか、知ってるか?」
ハルちゃんの言葉に、胸の奥にあった焦燥や罪悪感が少しずつ落ち着いていくのがわかった。
「るり……俺は、ずっと君のことを想ってた。10年以上も前からだ」
その言葉に、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
ふいに、少し前に伝えられたハルちゃんの告白を思い出す。あの時と変わらない視線が、言葉が、こうしてまた、まっすぐに差し出されている。
「るりと出会って、別れて……再会して、傷ついた君を見て。どんなときも、俺の想いは一度だって変わらなかった」
ハルちゃんは優しく私の頬に手を当て、目をじっと見つめる。
「たとえ世界が何を言おうと……俺にとって君は、いてくれるだけで、意味があるんだから」