愛しのマイガール

「どうしましたか?石神さん」

「……お客様がお見えになっています」

「お客様?だけどハルちゃんは外出してしまって……」

「いえ。瑠璃様に、お客様です」

「私…?」

誰かと聞く前に、私は察してしまった。その時の感覚は、あの日とよく似ていたから。

——九条さんが初めて私に電話をかけてきた、あの日に。

「もしかして……九条薫子さん……ですか」

私の問いかけに、石神さんは硬い表情で静かに頷いた。

「いかがされますか」

石神さんの問いかけにわずかに唇を引き結ぶ。けれどすぐに立ち上がった。体の奥に冷たいものがすっと流れ込んでくる。

浮かれていた心が一瞬で現実に引き戻されていくのを感じながら、私はできる限り落ち着いた声で答えた。

「会います。彼女は応接室ですか?」

「ええ……ですが、」

「私を名指しで呼んでいるなら……誤魔化せません。私が対応する間、石神さんはハルちゃんに連絡してくれますか?天城さんと一緒にいるはずなので……伝えるなら、早い方がいいですから」

「…承知しました」

頭を下げた石神さんにお礼を伝え、私は応接室へ向かった。


重厚な家具と庭園の花が飾られた部屋には、ひときわ美しく、そして冷ややかな気配が佇んでいた。
彼女こちらに視線を流し、完璧な微笑を浮かべた。

「──初めまして。蓬来瑠璃さん」

端整な身なりに包まれたその姿は、まさに本物のお嬢様だった。くせのない艶やかな黒髪に、少し冷たい印象を与える整った顔立ち。

手を膝に置き、座っている姿すら、まるで一枚の絵画のように美しかった。

「九条薫子と申します。こうして直接お会いするのは、初めてですね」

優しげな声と笑顔だが、彼女の瞳は真っ直ぐに私を見据え、その中には静かな威圧が潜んでいる。


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