愛しのマイガール
言葉の端々に、にじむ嫉妬と哀願。彼女の瞳にはいまにも溢れそうなくらい涙が溜まっていて、睫毛の先でかすかに震えていた。
涙を浮かべたまま、薫子さんは翔真さんを見つめ続ける。
翔真さんは、ほんのわずかに目を伏せた。
「……ごめん」
小さな謝罪のあと、それでもすぐに顔を上げ、静かに告げた。
「君を傷つけたこと、本当に悪かったと思ってる。だから俺のことならいくらでも責めてくれてよかった。切るなり潰すなり、好きにしてくれてよかった。……でも、その矛先を彼女に向けるのは違うだろ」
わずかに言葉を切って、彼は真っ直ぐに薫子さんを見据える。
「……君のやり方では、誰も幸せにはなれないよ」
薫子さんはかすかに肩を震わせ、絨毯の上に力なく膝をつく。誰にも救えなかった、孤独な人の姿だった。
私は息を吸い、小さく拳を握った。震える足をゆっくりと踏み出し、薫子さんの前に立った。
「……薫子さん」
私の声に、薫子さんが顔を上げる。その瞳には私への恨みもなにもなくて、ただ悲しみだけが映っていた。
「翔真さんの気持ちがどうだったかなんて、私にはわかりません。だけど、私の無知な行動があなたを傷つけてしまったことは、本当にごめんなさい。でも……」
震えそうになる声を必死に押さえて、私は続けた。
「私はもう、誰かの都合で振り回されたり、勝手な感情をぶつけられるのは嫌なんです。それだけは、どうか……わかってください」
薫子さんは、何も返さなかった。ただひと筋の涙を落とし、そのまま静かに俯いた。
その姿に、胸の奥が痛んだ。
彼女の涙は、たしかに誰かを傷つけた証だった。けれど同時に、誰にも救われなかった彼女自身の叫びでもあったのかもしれない。
顔を上げると、ハルちゃんと目が合った。彼は静かに頷き、私にだけ優しい目を向けてくれた。
けれど今だけは……この胸の痛みは、おさまりそうになかった。