愛しのマイガール
「あんなことされておいて心配するなんて、るりは優しいな」
「あ……ごめんなさい。そうだよね、これまで沢山ハルちゃんに迷惑かけたのに、こんなこと……」
「言ったろ。俺がるりのことで迷惑に思うことなんかひとつもないって」
ハルちゃんは足を組みなおし、ひざの上で指を交差させた。
「九条薫子は……まあ、しばらくは表に出られないだろうな。家も、九条の名も守らなきゃならないし。いずれ戻ってはくるだろうけど、月城と揉めたってことで、しばらくは何もできないはずだよ」
そう言ってから、ふと付け足すように言った。
「本当はあのまま、正式に反訴の手続きも進めようとしてたんだけどな」
「えっ……」
私は驚いて顔を上げる。私の顔を見て、安心しろと言うように、ハルちゃんはゆるりと首を振った。
「るりがあんなふうに言ってくれたから、俺の判断で取り下げた。許してはいない。けど、あそこまでやられても相手を責めきらないるりを見て……正直、俺のほうが胸が痛かったよ」
その言葉に、胸の奥が少しだけざわついた。嬉しいような、申し訳ないような、言葉にできない感情。
「そっか……」
小さく呟いて、紅茶をもうひと口。ほんの少し熱が落ち着いて、ぬるくなったその味が、今の気持ちにはちょうどよくなっていた。
「私……甘いよね。こんなんじゃだめだって、思ってはいるんだけど……」
ハルちゃんが、少し驚いたように私を見る。
「あのとき言ったことに、後悔はない。ちゃんと気持ちを伝えられたって思ってる。だけど……」
言葉を探しながら、私はカップを見つめた。
「これまで支えてくれたハルちゃんや、迷惑をかけた人たちのことを思うと……あれで本当によかったのかなって」
たしかに、自分の意思で言葉を紡げたことは間違いじゃない。強くなれたとも思う。
だけど――“月城”の人間としては、あれで良かったのかどうかは、まだ自信が持てなかった。