愛しのマイガール
わずかに会場内にどよめきが走った。けれどそれは驚きではなく、どこか柔らかい空気のように感じた。
次に手を挙げたのは、やや年配の記者だった。
「蓬来さんにお伺いします。正直、これまで月城家を巻き込んだ騒動も多く、世間では“ふさわしくない”という声もありました。それでもこうしてこの場に立った今の気持ちを、どう説明されますか?」
丁寧な言葉の裏に、少しだけ意地悪な響きがあるのがわかる。
場が一瞬ざわついた。
そのとき、私の隣にいるハルちゃんの気配がわずかに変わった。冷ややかな視線。ほんの一瞬、彼の眉がわずかに動く。
いつも冷静なハルちゃんが、今だけ、私の方を横目で見た。
言葉にはしないけれど、その視線がすべてを物語っていた。無理に答えなくてもいい。そう言ってくれていた。
(……でも、わたしは、)
「待って、ハルちゃん」
マイクを持ち上げたハルちゃんの手を制し、そっと息を吸い、私はマイクを手に取った。
「……確かに、これまでたくさんの方にご迷惑も、ご心配もおかけしてきたと思っています。“ふさわしくない”と言われたことも、耳に届いていました。怖くて、悔しくて、自分にはここに立つ資格なんてないんじゃないかと思ったこともあります」
一度小さく息を吸い、しっかりと顔を上げる。
「でも、それでも私がここに立っているのは、誰かに許してもらうためじゃありません。自分の意志で、彼の隣に立ちたかったからです」
ほんの少し、ハルちゃんの気配が和らぐのが伝わる。