愛しのマイガール
冗談とも本気ともつかないその口調に、私は何も言えなくなった。
けれどハルちゃんの瞳は真っ直ぐで、どこにも茶化すような気配はなかった。
「今すぐ籍を入れろなんて言わない。るりが嫌がることはしたくないから」
そう前置きしてから、ハルちゃんは穏やかに、けれど確かな声音で続けた。
「でも今は、俺の傍にいてほしい。君を守るためにも、“月城巴琉の婚約者”として世間に伝える。るりがすることは、それを許してくれるだけでいい」
静かに告げられたその言葉は、思っていたよりもずっと重かった。
でも、押しつけがましさはなかった。
「俺がついてる。一人で背負う必要なんかない。今のるりには戦うための武器と、安心して帰ってこれる場所が必要だろ?」
どこまでも理性的で、どこまでも誠実で。
けれどその奥には、どうしようもなく優しい想いがにじんでいた。
私は戸惑いながらも唇を噛んだ。
けれど、ハルちゃんの言葉が、胸の奥にあたたかく染み込んでいくのを感じた。
——守られることが、こんなにも心強いなんて。
私は俯いたまま、胸の奥で揺れ続ける思いを抱えきれずにいた。
「…でも…そんなの、……」
言葉はか細く、喉の奥から絞り出すようにしか出てこなかった。
けれどそのとき私は気づき始めていた。自分の中にある、何か小さな感情の芽に。
だけど、簡単に頷ける話じゃない。
月城グループの名前は、それだけで社会を動かすほどの力を持っている。
私は、そんな大きなものに守られるだけの存在じゃない。
その自覚は、嫌というほどあった。
だけど、ふと頭に浮かんだのは、幼い頃の記憶だった。