愛しのマイガール
「るり」
名前を呼ばれて、私は思わず顔を上げた。
ハルちゃんがまっすぐに私を見ていた。目を逸らすこともなく、感情を隠そうともしないその瞳は、真っ直ぐすぎて少しだけ息が詰まる。
「大丈夫だ。きみは俺が守る」
その一言は、驚くほど自然で。でも、胸の奥へと深く沁み込んできた。
不意打ちだった。だけど、それ以上に泣きたくなった。
心の中に、音もなく波紋が広がっていくのがわかる。
「守る」だなんて、まるでドラマの中のセリフ。けれど、どうしようもなく嬉しかった。
本当はずっと、悲しかった。怖かった。
誰かにそばにいてほしかった。「大丈夫」って、言ってほしかった。
だから押しつけることなんて一つもなくて、静かにそっと寄り添おうとしてくれるハルちゃんの気持ちがに、たまらなく安心した。
「……ハルちゃん、ほんとにありがとう」
やっと、言葉にできた。
無意識に浮かんだ私の笑みに、ハルちゃんは何も言わず、ただ穏やかな表情を見せてゆっくりと歩き出した。
私はその隣に並ぶ。歩幅を合わせるたび、鼓動が大きくなるのを感じた。
──“仮初の婚約者”。たとえそんな肩書きでも、今は少しだけ、心があたたかい。
(あの頃の、他愛もない約束がこんなふうにまた動き出すなんて…)
静かに、それでも確かに。
私の中で、新しい物語が始まろうとしていた。