愛しのマイガール
❁。✩
──やっぱり、瑠璃は俺の知ってる“るり”のままだ。
タクシーに乗り込んだ彼女の姿を見届けドアが静かに閉まるのを確認したあと、ふっと目を細める。
たった一時間。それだけの再会なのに、胸の奥がやけにうるさい。
息遣いも、揺れるまつ毛も、無垢な笑顔までも全部、幼い頃に見たるりと重なっていた。
何も変わらない。純粋で、まっすぐで、どこまでも無防備で。
…そう。るりは、ずっとそうだった。
冷えきった屋敷の空気に慣れすぎた幼少期。
誰かに甘えることも、弱音を吐くことも許されない日々の中で──中学で翡翠に出会い、初めて誘われて訪れた蓬来家のリビングには、音楽と笑い声が満ちていた。
そして、いつもその中心にいたのが、るりだった。
無邪気な笑顔で、何の迷いもなく俺の手を取ってくれた。
あの小さな手のぬくもりが、俺の中に初めて「本当のあたたかさ」を灯した。
──大きくなったら、ハルちゃんとけっこんする!
子どもの約束なんて、普通なら忘れてしまうものだ。
でも、俺には違った。あれは、道標だった。
どんなに孤独でも、どれだけ離れていても、心の支えになっていたのはあの約束と、あの笑顔だった。
「……可愛すぎるんだよ、るり」
思わず口をついて出た声が、スイートルームに続く静かな廊下に微かに響く。
タイミングを見計らったように、エレベーターの扉が開いた。いや違う。俺が、そう“調整した”。
ドアの隙間から、翡翠が姿を現す。
「おせーよ、翡翠」
「は?時間通りだろ?お前が急に“予定入ったから一時間遅らせろ”とか、無茶言ったクセに。…つーか、瑠璃来てる?メッセージ送ったのに既読がつかねえんだけど」
「るりなら今帰ったぞ」
「はあ!?」
明らかに苛立った声に肩をすくめてみせる。それだけで翡翠の目つきが鋭くなった。
「お前…まさか図って…」
「さあ?なんのことやら」
口元に浮かんだのは作り物じゃない笑み。
──ほんの少しでいい。ふたりきりの時間が欲しかった。ただ、それだけだった。
──やっぱり、瑠璃は俺の知ってる“るり”のままだ。
タクシーに乗り込んだ彼女の姿を見届けドアが静かに閉まるのを確認したあと、ふっと目を細める。
たった一時間。それだけの再会なのに、胸の奥がやけにうるさい。
息遣いも、揺れるまつ毛も、無垢な笑顔までも全部、幼い頃に見たるりと重なっていた。
何も変わらない。純粋で、まっすぐで、どこまでも無防備で。
…そう。るりは、ずっとそうだった。
冷えきった屋敷の空気に慣れすぎた幼少期。
誰かに甘えることも、弱音を吐くことも許されない日々の中で──中学で翡翠に出会い、初めて誘われて訪れた蓬来家のリビングには、音楽と笑い声が満ちていた。
そして、いつもその中心にいたのが、るりだった。
無邪気な笑顔で、何の迷いもなく俺の手を取ってくれた。
あの小さな手のぬくもりが、俺の中に初めて「本当のあたたかさ」を灯した。
──大きくなったら、ハルちゃんとけっこんする!
子どもの約束なんて、普通なら忘れてしまうものだ。
でも、俺には違った。あれは、道標だった。
どんなに孤独でも、どれだけ離れていても、心の支えになっていたのはあの約束と、あの笑顔だった。
「……可愛すぎるんだよ、るり」
思わず口をついて出た声が、スイートルームに続く静かな廊下に微かに響く。
タイミングを見計らったように、エレベーターの扉が開いた。いや違う。俺が、そう“調整した”。
ドアの隙間から、翡翠が姿を現す。
「おせーよ、翡翠」
「は?時間通りだろ?お前が急に“予定入ったから一時間遅らせろ”とか、無茶言ったクセに。…つーか、瑠璃来てる?メッセージ送ったのに既読がつかねえんだけど」
「るりなら今帰ったぞ」
「はあ!?」
明らかに苛立った声に肩をすくめてみせる。それだけで翡翠の目つきが鋭くなった。
「お前…まさか図って…」
「さあ?なんのことやら」
口元に浮かんだのは作り物じゃない笑み。
──ほんの少しでいい。ふたりきりの時間が欲しかった。ただ、それだけだった。