愛しのマイガール
一瞬で全身に熱が走る。
こんなに近い距離が嘘みたいなのに、ハルちゃんの目には、軽さも余裕もどこにもなかった。
「…だ…だって私、今のハルちゃんのこと、よく知らなくて……」
声が震えていた。心の迷いを、知られたくなかった。
けれど彼は、すぐに応える。
「それなら、知ってくれ」
その言葉とともに、私の髪に触れる指先がゆっくりと首筋をなぞる。くすぐったくて、でもほんのり熱を帯びていて、私の心は揺れた。
「るりの笑顔が、俺のすべてだって」
ハルちゃんの声は優しいけれど、そこには欲と、執着と、それから……真剣な何かが、その言葉に込められていた。
胸がきゅうっと締めつけられた。
こんなふうに大事にされるのが、怖い。
だって私は知ってしまっていた。
突然、信じてたものが壊れる痛みを。地獄に突き落とされるような、あの感覚を。
——だから、怖くて。
ハルちゃんが与えてくれる甘さをそのまま受け取るには、私はちょっと……傷つきすぎてた。
ハルちゃんはそれ以上なにも言わなかった。
けれど離れもしなかった。
何もせず、ただそこにいて、私を見ていた。温かい目で、まっすぐに。
信じたくなる。でも、まだ少しだけ、怖い。
言葉にできない思いを抱えたまま、夜は静かに更けていく。
カーテンの隙間から射し込む月の光が、まるで“ルナティア”そのものみたいに、静かに部屋を満たしていた。