愛しのマイガール
「先ほども言いましたが、すでに確認済みです。感情ではなく、事実に基づいて冷静に進めましょう」
天城さんの言葉が、じわじわと胸に染みてくる。
「……私、本当に騙されてたんだ……」
震えるような声が漏れた。
悔しい。情けない。
何も知らずに信じていた自分が、すごく愚かに思えた。
膝の上で組んだ指に、力がこもる。
「蓬来さんに落ち度はありません。少なくとも、現時点では」
その言葉は優しさじゃなくて、確認事項としてのもの。でも、だからこそ嘘がないと分かって、胸の奥にずしんと響いた。
静かな時間が流れる。
少しして、隣にいるハルちゃんが背もたれに体を預けながら低い声で言った。
「嘘つくやつってのは、信じさせるのが上手いんだよ。相手が本気で信じてるほど、な」
私はその横顔を見上げる。
落ち着いているけれど、どこか怒っているようにも見える。
「見抜けなかったるりが悪いんじゃない。……あまり自分を責めるなよ」
その一言に、心の奥で固まっていたものが少しずつほぐれていく。
「……うん……ありがとう」
かすかに唇が動くのを、自分でも感じた。
ちゃんと声になっていたかはわからないけれど、ハルちゃんには届いていた気がする。
そばで寄り添ってくれる彼の存在が、今の私には唯一の支えだった。
天城さんは私たちのやり取りに特に何も反応を見せず、淡々と別の書類を取り出す。
「今後の優先事項は九条側への正式な反論と、必要に応じた法的対応です。いいですね?」
「……はい。お願いします」
私は静かに頷いた。不安はまだ残っている。
けれどこれで、進むべき道が少しだけ見えた気がする。
そして、隣にハルちゃんがいてくれることが、何よりの救いだった。