愛しのマイガール
目の前に広がる景色は、まるで絵画の一部を切り取ったようだった。手入れの行き届いた美しい庭園。色とりどりの花々が穏やかな風に揺れ、木漏れ日が木々の合間からやさしく差し込んでいる。
その先には、遠く霞をまとった山並み。静かで、やさしくて、何もかもが穏やかな時間の中に溶けていくようだった。
……こんな場所に、前にも来たことがあった。
翔真さんと付き合い始めた頃。春先の休日、少し遠出して訪れた郊外の庭園。咲き始めたチューリップを見て、彼がぽつりと言った。
『こういう場所、瑠璃に似合うね』
私は素直に喜んでいた。あのときの声も、目元の笑顔も、ちゃんと覚えてる。
私だって笑っていた。未来がどうなるかなんて考えもせずに、ただ、信じていた。
「……バカみたい」
ぽつりと漏れた言葉と同時に、胸の奥に鋭い痛みが刺さった。思い出が美しいほど、苦しくなる。そうして瞬きをしたとき、涙がにじんだ。
「あ……」
慌てて指先でぬぐう。こんなところで泣くつもりなんてなかったのに。涙なんか、見せたくなかったのに。
「……ねえ、おねえちゃん、ないてるの?」
驚いて顔を上げると、そこにいたのは小さな女の子。ふんわりとした髪に、きらきらした明るい瞳。白いカーディガンの袖をちょこんとつまんで、私の顔をのぞき込んでいる。
「つーのおかし食べる? おいしいよ」
「えっ…えっと…ありがとう」
小さな手のひらには、クッキーの詰め合わせが握られていた。包みは少し皺がよっていて、きっとずっと抱きしめていたんだろう。それを目いっぱいに伸ばして差し出してくる。
私は少し戸惑いながら、それを受け取った。
「お名前、つーちゃんっていうの?」
「うん。ままがそうよんでるの。かわいいでしょ」