愛しのマイガール
その後もう一度会場に戻ると懇親会も終盤で、どこかで流れていた弦楽の生演奏もいつの間にかフェードアウトしていた。
拍手、笑い声、グラスの音。ひとつひとつが遠くなっていく。
誰かと挨拶を交わしていくハルちゃんの背中を見ながら、私はふと深く息をついた。
(……なんとか、終わった)
大した会話はしていない。にこやかに笑って、時々頷いて、必要な言葉だけを返して。
でも、これまでの人生でこんなに緊張し続けた時間はなかった気がする。
(今すぐにでも座りたい……)
そんな私の表情を見たのだろう。ふとハルちゃんが戻ってきて、小声で言った。
「お疲れさま。もう少しで一区切りつくよ」
その声を聞いた瞬間、張りつめていたものが一気にほどけたような気がした。
私は小さく頷いて、「うん……」と力の抜けた声で返す。
ふたりで会場の端へ移動し、グラスを置いたテーブルのそばで並んで立つ。
遠巻きに視線は感じるけれど、もう不思議と怖くなかった。
「……るり、ひとつ話しておきたいことがある」
ハルちゃんが、落ち着いた声で切り出した。
「今日こうして紹介した以上……近いうちに、正式に報道に出すつもりだ。君が婚約者である事実を大々的に公表する」
私は、ふっと呼吸を止めた。
「……そっか。もう、隠せることじゃないよね」
「うん。でも無理はさせたくない。公表することで君にリスクが出るようなら、時期は調整する」
「大丈夫だよ。いつかは知られることだもん。それに、これは自分で決めたことだから……」