愛しのマイガール

ソファに並んで座った私たちの間には、少しの沈黙があった。
けれどそれは居心地の悪いものじゃなくて、言葉にできない気持ちが静かに揺れている、そんな時間だった。

「…色んな記事を見てて、思ったの」

私は視線を落としたまま、ぽつりと呟いた。

「どの記事にも“月城の婚約者”って書いてあって、肩書きとか、家柄とか、そんなことばかりで……ああ、これがハルちゃんのいる世界なんだなって。私にとっては、まるで別世界で」

胸の奥が締めつけられるけど、そこで立ち止まってはいけないと思う自分もいる。
不安に押しつぶされそうになるけれど、ハルちゃんに甘えてばかりの、弱いままじゃいたくない。

「もちろん、そんなこと最初からわかってた。…いまも、覚悟してるつもり。だけど、私だけが置いていかれてる気がして…」

私はゆっくりと顔を上げた。
その先には、変わらず私を見つめてくれる彼がいた。

真っ直ぐで揺るぎない瞳。その奥に映る私は、どんなふうに見えているんだろう。

「ごめんなさい。散々頼っておいて、今さらこんなこと言って。ただ……“月城巴琉の婚約者”として、どんどん進んでいって、なのに私自身が、そこにいない気がして、その…なんて言ったらいいのか、」

言葉に詰まり、深呼吸をした。

「うまく言えなくてごめんね」

結局何が言いたいのか、私自身も分かっていなかった。
せっかく、ハルちゃんの大事な時間をもらってるのに。

(なんだかすごく、もどかしい…)

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