愛しのマイガール
心配かけて悪かったとは、ちょっと思ってる。
妹が急に“婚約者”として報道されて、相手は親友で……その上、全国放送に名前まで出た。少しくらい騒ぎたくなるのも、しかたない。
「でも、“相手が巴琉だから一万歩譲って許す”って。言ってたよ」
「譲られなくても掻っ攫うから関係ねえよ」
ハルちゃんの低くて落ち着いた声が、なぜか妙に胸に残った。
ストレートで、迷いのない言葉。どう返せばいいかわからず、私はそっと目を伏せた。
「挨拶にはちゃんと正装で行くよ。るりの服も俺が準備していい?」
「え、そこまで気合い入れるの?」
「当然だろ。“娘さんをください”って言いに行くんだから」
さらりと口にしたその言葉に、思わず息が詰まりそうになる。
ハルちゃんにとっては、冗談半分、あるいはもう決意の延長なのかもしれない。
「……やっぱりずるい、ハルちゃん」
ぽつりとこぼすと、ハルちゃんはくすっと笑った。
その笑顔が、少しだけまぶしかった。
見つめていると、心のどこかがじんわり温かくなる。
けれどこれがどんな気持ちなのか、まだ答えは出せない。
私はそっと手のひらを握ったまま、自分の心の輪郭を探していた。