愛しのマイガール
———

五日後の昼前。私は滞在しているホテルのエントランスでそわそわと落ち着かないまま座っていた。

ハルちゃんから贈られたネックレスを、気づけば何度も指先で撫でている。
心を落ち着かせたいのに胸の奥がふわふわして、うまく息ができない。

そのとき、スマートフォンが短く震えた。

——着いたよ。

それを確認して外へ出ると、目の前に漆黒のメルセデス・ベンツSクラスが音もなく停まっていた。
つややかなボディは陽光を受けて鈍く輝き、どこまでも静かで、どこまでも品がある。

その助手席の窓がスッと下りて、ハルちゃんが軽く手を上げた。

「おはよう、るり。よく眠れたか?」

「う、うん……ちゃんと寝たよ」

恥ずかしさを紛らわせるように返しながら助手席に乗り込むと、車内には彼の香水の匂いがふんわり漂っていた。
私のために選んでくれたワンピースは今日もぴったりで、少し背筋が伸びる。

助手席に乗り込んで、車はゆっくりと蓬来の実家へ向かい始めた。

「緊張してる?」

ハルちゃんの問いかけに、私は少しだけ間をあけて頷く。

「緊張……というか、お兄ちゃんが、なんて言うかなって」

「ああ。俺には“覚悟はできてんだろうな”ってメッセージきたよ。今日の朝六時」

「うう……お兄ちゃんがごめんね」

「いや。俺、なんだかんだあいつのそういうとこ嫌いじゃない。るりのこと本当に大事にしてるのがわかるし」

その言葉に、少しだけ胸が熱くなった。

ハルちゃんが私を守ってくれて、お兄ちゃんが私を心配してくれる。
私は、とても恵まれている。


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