愛しのマイガール
「ラフな格好じゃないなんて珍しいな。お前がちゃんと客扱いしてくれるとは思わなかった」
「してねえよ。してやってるだけだ」
「あっそ」
「しかもな、俺は確かに……確かに、だぞ?お前に瑠璃の件で協力は頼んだ。手を貸してくれって言った。そこまでは確かに、俺がお前に頼んだ」
お兄ちゃんはわざとらしくひと呼吸置いて、バン!とテーブルを叩いた。
「でも、俺は聞いてない!全国ネットで"蓬来瑠璃が月城巴琉の婚約者です”って紹介されるところままでは、な!」
「それ、わざわざ朝の6時に電話してきてまで言うことか?」
「うるせー!帰国した途端、いきなり朝の情報番組で、“話題の御曹司を射止めたのは音楽一家秘蔵のヴィーナス!?”なんてやってたら、普通びっくりするだろ!」
「ヴィーナス、愛と美の女神か。いいな、それ。るりにぴったりだ」
「そこじゃねぇ」
お兄ちゃんはぐっと額に手を当てて、深いため息をついた。
「で、あのタイミングで初めて知った俺の気持ち、考えたことあんのか?」
「悪いとは思ってるよ。るりを守るために最善を選んだつもりだったけど、事前に話すべきだったな」
「……まあ、わかってんならいい」
そう言いながらも、お兄ちゃんの口元はどこか緩んでいた。