愛しのマイガール
「でもな、俺に一言なく全国の朝の茶の間に“俺の妹が結婚します”って流された兄の気持ちは一生忘れねえからな」
「怖。わかったよ、じゃあ今後の人生イベントは兄専用のプレミア席を押さえとくよ。文句はその場でどうぞ」
「言ったな?その席に俺がダメ出ししたら、容赦なくブーイング飛ばすからな」
「覚悟しとく」
ケンカとも冗談とも取れるふたりのやり取りに、ふっと頬が緩んだ。
中学生のときからよく言い合ってて、でも最後には並んで帰ってくるような関係。
その距離感が今もこうして変わらないんだって思うと、自然と笑顔になる。
「まあ、何にせよ……」
お兄ちゃんがふと視線を落として、私をまっすぐに見た。
「瑠璃が自分で選んだんなら、俺は文句は言わない。……ただし、絶対に泣かせるなよ」
「泣かせないよ。むしろ、俺が泣かされるかもしれないけどな」
「それはそれで見ものだな」
お兄ちゃんは鼻で笑いながら、リビングのソファにどっかりと腰を下ろした。
「じゃあ次は、家族の食卓だ。覚悟しろ。うちは飯の場でも容赦ないぞ」
「それは……ちょっと怖い」
「そう思うなら今日は生き残れよ、月城巴琉」
まるで勝負に挑むかのように言い放って、お兄ちゃんはふっと笑った。
そしてその笑いに、ハルちゃんもお返しのように口角を上げた。
こうして、ハルちゃんは正式に蓬来家の洗礼?を受けることになったのだった。