愛しのマイガール
「……私、信じていただけなのに……どうして、こんなに責められなきゃいけないの……」
唇が震えて、視界が滲みかけたとき。ハルちゃんが、私の手にそっと手を重ねてくれた。
「落ち着いて。……るり、これは責任の問題じゃない。印象を操作しようとしてるだけだ。九条薫子は、るりを悪者に仕立てて、自分のプライドを守りたいだけだよ。でも、俺はそれを絶対に許さない」
低く、静かな声が、胸の奥まで届く。
「反訴の準備は進めてる。榊が婚約を隠して交際していた証拠、るりがどれだけ傷ついたか、その全部を……俺たちの手で、証明する。だから、怖がらなくていい。俺が全部支えるから」
“俺が全部支えるから”
その言葉が、今の私には何よりの拠り所だった。
心が少しだけ、ふっとほぐれていく。
でも——。
「……それでも、やっぱり、怖いよ」
私は目を伏せて小さく息を吐く。
「信じてただけなのに、こんな形で裏切られて、責められて……。何を信じていいのかもわからなくなる。……全部、夢だったみたい」
言葉にした瞬間、胸がきゅっと締めつけられた。
「でも、私……もう逃げたくないって、思ったの」
顔を上げると、ハルちゃんの瞳が、少しだけ驚いたように揺れた。
「……一番辛かったとき、ハルちゃんが手を差し伸べてくれて……私のことも、昔の約束も全部守るって言ってくれて。……本当に、すごく嬉しかった」
その気持ちは、まだ恋じゃないかもしれない。感謝かもしれない、信頼かもしれない。
でも、それでも私は。
「だから、泣き寝入りはしない。誰にどう思われても、私は間違ってなかったって、証明したい」
涙は出なかった。けれど、胸の奥には震えが残っていた。
ハルちゃんはふっと笑って、私の手を握り返してくれた。
「……そうか。るりは、強いな」
その声にまた、私は勇気づけられた。
私は彼の目をまっすぐに見返しながら、小さく、でもしっかりとうなずいた。