愛しのマイガール
それから天城さんは資料をまとめ、手元のタブレットに目を落としながら事務的に続けた。
「では、正式な手続きと書類は追ってお送りします。必要な局面が来たら、すぐ動けるように準備しておきます」
立ち上がり際、彼は私に向かって一度だけ視線を向ける。
「蓬来さん。念のため申し上げておきますが、今後九条側から個人的な接触や“直接の謝罪”のような動きがある可能性も否定できません」
一瞬、胸の奥がきゅっと収縮する。
“接触”という言葉が頭の中でリフレインして、喉の奥に冷たい何かが降りたような気がした。
私の心が少しだけざわつく。けれど天城さんの口調は変わらない。
「そうした行為は、法的には“印象操作”や“同情誘導”として仕掛けられる場合があります。こちらはあくまで事実と証拠に基づいて進めますので、感情的な判断は控えてください」
「……わかりました」
そうは返事したけれど、いざそのとき、私は冷静でいられるだろうか。
言いようのない怖さが喉の奥にひっかかって、うまく呼吸ができなかった。
天城さんの淡々としたその声に、情は一切ない。けれどだからこそ彼の言葉は現実として、私の胸に深く突き刺さった。
「ご不明点があれば、専務を通じてご連絡ください」
それだけを言い残し、天城さんはハルちゃんに軽く会釈をしてから、音もなく部屋を出ていった。