愛しのマイガール
重たかった空気が、ひとつの扉の音と共にふっと静かにほどけていく。
さっきまであんなに緊張していたのに、今は空気が少しだけ柔らかく感じられる。隣に座るハルちゃんの体温と、そのそばに自分がいるという事実が、心を静かに落ち着かせてくれた。
「……るり」
ハルちゃんの声に顔を向けると、いつものように穏やかな、でもどこか真剣な眼差しがそこにあった。
「この先、九条側とのやり取りも報道対応も、本格的に動いていく。精神的にも負担が増えると思う。だからこそ、生活の拠点も、しっかり守れる場所に移しておきたい」
私は、なんとなく言いたいことを察した。
でも、あえて黙って耳を傾けた。
「だからこれからは正式に、ここの別邸に住まないか?もちろん強制はしない。でも、るりを守るには、もうあの場所じゃ足りないんだ」
「……足りない……?」
彼はゆっくりと頷いた。
「ここに……俺の家にいてほしい。形式じゃなく、気持ちの上でもそばにいてほしい。俺はもう君を恋人……いや、妻だと思ってる」
どこか切実なハルちゃんの表情に、胸の奥がぎゅっとなった。
「私、迷惑にならないかな……?」
思わず漏れたのは、まだ消えきらない小さな不安。けれどハルちゃんはまっすぐに、迷いなく答えてくれる。
「ならないよ。これは俺の意志で言ってる。るりがここにいることが、俺にとっては自然なことだから」