愛しのマイガール
私は、逃げ場を求めてここに来たわけじゃない。
ハルちゃんの優しさに甘えたいだけの気持ちから、もう少しだけ前へ進みたい。
“月城瑠璃”という名前に、相応しくなれるように。
歩き終えた先で立ち止まると、英子さんがそっと手帳を閉じた。
「初日としては申し分ありません。午後からは実際に資料を通して月城グループの基礎構造について学んでいただきます。分からないところがあれば、遠慮なく聞いてください。私たちはあなたの味方ですから」
「……はい。ありがとうございます」
私はもう一度、小さく頭を下げる。
味方。
その言葉に、胸がふっとあたたかくなった。
(ちゃんと、私を見てくれている人がいる)
そのことが、今の私にはなによりの支えだった。
外ではまだ、報道や噂が渦を巻いている。九条さんの仕掛ける圧力も、これから本格的になっていくかもしれない。
不安の種は尽きない。それでも。
(守られるだけじゃなく、自分の足で立てる私でいたい。
彼のそばにいられる理由を、ちゃんと自分の手で作りたい。誰かに揺さぶられても崩れないような、そんな私に。
そう思いながら、私は再び背筋を伸ばした。