愛しのマイガール
別邸に戻ると、夜の静寂がやけに濃く感じられた。
ライトアップされた回廊を通り、玄関に足を踏み入れたところで執事の石神が恭しく頭を下げる。
「お帰りなさいませ、巴琉様」
「るりは?」
焦りからか、声がわずかに低くなる。
石神は一瞬苦笑いを見せ、それから静かに口を開いた。
「本日は終日、英子の付き添いで応接での振る舞いと座学のお勉強をされておりました。先ほどようやくレッスンを終え、今は自室でお休みになられています」
「……英子夫人か…るりをいじめてないだろうな?」
「とんでもない。とても素直で頑張りやなお嬢さんだと褒めてましたよ。……ただ、ひとつ申し上げるとすれば…」
「なんだ」
「……瑠璃様に今一番必要なのは、自信だと、申しておりました」
「……それは…難しいだろうな」
石神夫妻の事は信用しているし、夫人の言うことは正しいのだろう。だがるりにとって、自信を持つというのは今の彼女では難しい。
ある日突然、信じていた男から裏切られて、今もなお追い詰められているのだ。素直なるりならば、自分を責めるに決まっている。
「るりは、食事は?」
「まだです。巴琉様をお待ちになるとおっしゃっていました」
「そうか……」