愛しのマイガール
その言葉の裏に込められた想いを、石神は察しているはずだった。
どこまでも健気で、いじらしい。少しのことで不安になり、人一倍繊細なあの子が、自分を待っている。
(……甘やかさずに、いられるわけがない)
「なら食事は二人分で用意してくれ」
「かしこまりました。では食堂に支度を……」
「いや、あの子の部屋に運んでほしい。……今日は、彼女のそばで食べたい気分だ」
石神が小さく頷き、廊下の奥へと消えていく。
俺はその場でネクタイを緩め、上着のボタンに手をかける。
こんなふうに家に帰って、着替えもせずに真っ先に向かいたい場所があるなんて、かつては想像すらできなかった。
階段を上がる足取りはどこか急いていた。すぐにでも抱きしめて、頑張らなくてもいいと言ってやりたい。
君はそのままで十分だって、そう伝えたい。
それを言えば、また彼女は戸惑うのだろう。少しだけ顔を赤らめて、困ったように笑って、「そんなことないよ」と、自分を下げようとする。
そんな姿さえ、愛しくてたまらない。
(自信も何もかも、全部俺が取り戻す)
「るり、入っていいか?」
声をかけると小さな返事が返ってきて、ゆっくりとドアを引く。
「ハルちゃん!おかえりなさい」
るりが俺の顔を見るなり、ぱっと表情を明るくした。
「……あの、石神さんが夕食用意するって言ってくれたんだけど、ハルちゃんが夕方に帰って来るって聞いてたから待ってて。……よかった?」
少し不安そうに目を見上げてくる。その瞬間、心の奥に何かがじんわりと広がった。
「当たり前だろ。嬉しいよ」
るりの頬がゆっくりと、桃のように色づいていく。
たまらない愛しさに俺は無意識のうちにその頭に手を置いていた。