宵の月、秘めたる契り―帝に愛された二人の女御―
綾子の腕の中で、帝は息を整えながら囁いた。

「ううっ……」

深く果てた後、帝はその温もりに満たされながら、重なるように綾子の上に体を預ける。

「はぁ、はぁ……綾子……そなたは……朕のものだ……」

満ち足りた声でそう呟きながら、濡れた髪を撫でた。

だが――

綾子はその腕の中から、そっと身体を引き離した。

「……やめてください。」

「綾子?」

「私だけが特別ではないのでしょう?」

帝が眉をひそめた、その時だった。

「失礼します。」

御簾の向こうから、女の声がした。

女房が青ざめた顔で御簾を上げると、そこに立っていたのは詠子だった。

白梅の文様の小袖を着て、両手を膝の上に重ねている。

「綾子様にご挨拶をと思いまして……お部屋を訪ねました。」

綾子は肩を震わせ、そっと視線を逸らした。
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