今日も推しが尊いので溺愛は遠慮いたします!~なのに推しそっくりな社長が迫ってきて!?~
(ルイ さんの声で『好ましい』とか……気をつけててもドキドキしちゃう)

雪雅の瞳がどこかいたずらに細められた。

「ここだけの話……君が俺を男として意識しないでいてくれるのが非常にありがたいんだ。女性秘書の場合、せっかく優秀でもその辺りが原因でうまくいかないことも多かったから」

彼は最大限に優しい言葉を選んだけれど、ようするにアプローチをかけられて困っていたということだろう。でも、前任秘書たちの気持ちも理解はできる。彼の近くで過ごしていればときめくのは必然だろう。自分に自信のある女性なら、その思いを伝えたくなっても不思議はない。

(まぁ私には……縁のない話だけど)

たとえ彼に恋をすることがあっても、住む世界の違う相手にアプローチする勇気は自分にはない。

「上司にそういう感情を抱いたりはしませんので、どうかご安心なさってください」

飄々と芽衣子が告げると、雪雅は楽しそうに目尻をさげた。

「やっぱり笹原はクールだな」

会議中には見せない、年齢相応の砕けた笑み。あまりにも美しくて、つい見入ってしまう。

(私は推しのこの尊い笑顔が見られるだけで幸せだし、仕事もがんばれるもの)

容貌だけでなく中身もそっくりなので、芽衣子のなかでルイと雪雅の境界線はどんどん曖昧になっていく。ちょっとおかしいことは自覚しているので、雪雅本人には決して悟られないよう気をつけているつもり。だから、彼の前ではいつも以上にクールな自分を装っていた。
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