敵将の寵姫 ~結びの夜に咲く恋~
しかし、黒田の軍は思ったよりも早く北国へ迫ってきた。
「こうなれば、我らだけでも応戦しよう。」
父の声は冷静で、けれどどこか張りつめていた。私は心の中で何度も繰り返す――父は強い。必ずこの城を守り抜いてくださる、と。
「結、おまえはこの城で待っているんだ。」
「はい、父上。」
そう答えながらも、不安は消せなかった。胸の奥に、氷のような何かがじわりと広がっていく。
「父上。」
その時、後ろから幼い声が聞こえた。
「おう、四郎丸。」
弟が、母上と共に現れた。まだ幼い弟の手を母がしっかりと握っている。
「四郎丸。もし父が負けたら、おまえは風間の元へ行け。」
「はい。」
弟の返事は、小さな体に不釣り合いなほどしっかりしていた。
私は唇を噛みしめた。
……戦が本当に、ここまで来てしまったのだ。
春が、もうすぐだというのに。
「こうなれば、我らだけでも応戦しよう。」
父の声は冷静で、けれどどこか張りつめていた。私は心の中で何度も繰り返す――父は強い。必ずこの城を守り抜いてくださる、と。
「結、おまえはこの城で待っているんだ。」
「はい、父上。」
そう答えながらも、不安は消せなかった。胸の奥に、氷のような何かがじわりと広がっていく。
「父上。」
その時、後ろから幼い声が聞こえた。
「おう、四郎丸。」
弟が、母上と共に現れた。まだ幼い弟の手を母がしっかりと握っている。
「四郎丸。もし父が負けたら、おまえは風間の元へ行け。」
「はい。」
弟の返事は、小さな体に不釣り合いなほどしっかりしていた。
私は唇を噛みしめた。
……戦が本当に、ここまで来てしまったのだ。
春が、もうすぐだというのに。


