野いちご源氏物語 二八 野分(のわき)
若君(わかぎみ)大宮(おおみや)様のお屋敷にもお見舞いに行かれた。
もうすっかり天候(てんこう)も落ち着いていたから、大宮様はゆったりとお(きょう)を読んで修行(しゅぎょう)なさっていた。
若くてそれなりに美しい女房(にょうぼう)たちはこのお屋敷にもいるけれど、六条(ろくじょう)(いん)の女房たちに比べれば気配(けはい)も着物もやはり(おと)っている。
むしろここでは、顔立ちのよい人が(あま)姿(すがた)でお仕えしている方が雰囲気に合っていてよいわ。

夜になってから内大臣(ないだいじん)様も母君(ははぎみ)のお見舞いにいらっしゃった。
姫君(ひめぎみ)に長くお会いしていないことが寂しくて」
内大臣(ないだいじん)(てい)に引き取られた雲居(くもい)(かり)に会いたくて、大宮様はお泣きになるの。
「近いうちにこちらに上がらせましょう。どうにも悪いことばかり考えてしまうようで、すっかりやつれております。本当に娘など持つものではありませんね。親は()苦労(ぐろう)ばかり多うございます」
祖母君(そぼぎみ)としての監督(かんとく)不行(ふゆ)(とど)きを責めるお気持ちが見え隠れするので、大宮様は無理に「姫君に会いたい」とおっしゃることはできない。

「その姫のことだけではないのです。近ごろ出来(でき)の悪い娘を引き取ってしまいまして、(あつか)いに困っております」
近江(おうみ)(きみ)のことをおっしゃって苦笑いなさる。
「まぁ、そんな。あなたの姫ならば出来が悪いわけがないでしょう」
「それがとんでもない娘でございます。どうにかしてお目にかけたいものです」
そんなお話をなさっていたようね。
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