契約母体~3000万で買われた恋~
真壁課長は、私をまっすぐに見つめた。

私は逃げられなかった。その視線からも、この場の空気からも。

「……奥様から、課長の子供を産んでくれないかと、言われました。」

声が震えていた。けれど、それでもちゃんと伝えなければならないと思った。

すると、真壁課長の表情が一変した。

「馬鹿なことを……」

低く、怒りを押し殺したような声が落ちる。

「子供は欲しいさ。でも……麻里の産んだ子供以外、俺はいらない。」

それはまぎれもなく、妻への変わらぬ愛情の証だった。

私は、静かに心が締めつけられるのを感じた。

「慎一、落ち着いて……ちゃんと聞いて。」

麻里さんが、そっと課長の手を取った。その手がわずかに震えていた。

「私は、もう……子供ができないの。」

その言葉に、課長の手がわずかに反応する。けれど、指先は離れなかった。

「医師から、はっきり告げられたわ。もう、望めないって。」

彼女の声は静かで、哀しみと決意が入り混じっていた。

「あなたの血を継いだ子を、どうしてもこの世に残したい。だから……彼女にお願いしたの。」

レストランのテーブルに、重苦しい沈黙が落ちた。

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