契約母体~3000万で買われた恋~
「何百万もかけて不確かな治療をするよりも、自然に受胎すれば済む話でしょう?」

私の手の中で、体温計が冷たく感じられた。

“性行為を行ってもらう”――そう、彼女ははっきりそう言った。

愛ではなく、義務として。排卵日に合わせた、計画的な行為。

「……つまり、“妊娠”さえできれば、どうでもいいということですか?」

自分でも驚くほど、静かな声が口をついて出た。

麻里さんは何も答えなかった。ただ、薄く笑っていた。

それが――彼女の“答え”だった。

「これは――愛人契約よ。」

麻里さんは、まるで業務説明でもしているかのような口調で言った。

「……愛人……」

慎一さんが、息を詰めたようにその言葉を繰り返す。

「そんな扱い、俺は――」

「じゃあ、“彼女”とでも思えば?」

麻里さんはふっと微笑んだ。けれど、その笑みは優しさとはまるで違った。

「でも、なるべく無駄のないようにしてね。私だって、愛人に夫を貸す身なの。無駄打ちは避けたいわ。」
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