契約母体~3000万で買われた恋~
「私は、大丈夫です。」

自分でも驚くほど、しっかりとした声が出た。

「私は……このチャンスを逃したくないんです。」

見つめながら、言葉を続ける。

「あなたに……抱かれたい。」

たとえ、誰かの妻に貸し出された身であっても。

契約のためでも、最初は計算でも――

私は、ずっとこの人が好きだった。

「真壁課長は……私が相手じゃ、不服ですか?」

その問いに、慎一さんの目がわずかに見開かれ、そして――静かに首を振った。

「……そんなわけないだろう。」

震えるように、静かに言ったその声は、何よりも誠実だった。

私はゆっくりと手を離し、彼の胸にそっと触れた。

彼もまた、迷いを抱えながら、私を必要としてくれている。

この夜、私はようやく彼と心を重ねる。

それが“始まり”であってほしいと、ただ願いながら――。
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