契約母体～3000万で買われた恋～
そして、契約から三年が経とうとしていた頃。派遣会社から一本の電話が入った。

「お疲れ様でした。契約は無事終了となりました。」

……つまり、あと二ヶ月でこの会社ともお別れだ。

今の仕事に未練があるわけじゃない。でも――真壁課長と、もう会えなくなるのだと思うと、胸の奥がじんと疼いた。

気を紛らわせるように、私はオフィスを抜け出し、自販機のある休憩スペースへと向かった。

ボタンを押す手が少し震える。缶コーヒーが落ちる音が、やけに大きく響いた。

「あ、お疲れ様です。」

振り向くと、ちょうど真壁課長がジュースを手にしていた。薄く汗をかいた額に、疲れた笑み。

「里村さんも休憩？」

「はい、ちょっとだけ。」

「頑張ってるね、いつも。」

そう言って、課長は穏やかに笑う。

ああ、この笑顔とも、もうすぐ――。

私は手にした缶コーヒーを見つめながら、言えない思いを喉の奥に押し込めた。
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