契約母体~3000万で買われた恋~
「真壁課長、今日……お昼、一緒に食べませんか?」

少し緊張して問いかけた私に、課長は一瞬驚いたような顔をしたあと、柔らかく笑った。

「いいよ。どこかに食べに行く?」

「はい。」

本当は、節約のためにお弁当を作ってきていた。でも、今日は特別。

課長と一緒に過ごせる時間が、あとどれだけ残っているか分からないから。

お昼休憩になって、二人でオフィスを出た。

向かったのは、駅近くのファミリーレストラン。

思ったよりも気取らない場所に、少しほっとする。

「ランチセットがあるね。」

「それにしましょう。」

席についてメニューを開いた課長は、あっさりと一番手頃なセットを選んだ。

案外、庶民的なんだな。

そんな些細な一面に、私はまた惹かれてしまう。

食事が届くまでの間、他愛もない話をしながら、時折見せる課長の微笑みに胸がざわつく。

“このままずっと、こんなふうに過ごせたらいいのに”

心の奥で、叶わない願いがそっと芽を出していた。
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