契約母体~3000万で買われた恋~
「課長、お話があります」

ランチの帰り道、横並びで歩きながら、私は思い切って切り出した。

「ん? 何?」

真壁課長は、私の表情から何かを察していたのか、少し真剣な声になる。

「私……あと2か月で契約終了なんです。」

すると課長は、明らかに驚いた顔を見せた。

「え? てっきり更新すると思ってたけど……」

「私も、続けたかったです。」

ほんの短い会話。けれど、それ以上の言葉が見つからなかった。

やるせない空気が、私たちの間に漂った。

「真壁課長……」

私が呼ぶと、課長は「ん?」と優しく応じる。

私はその顔を見つめながら、自分の心に気づく。

――私、きっとこの人に褒めてもらいたくて、頑張ってきたんだ。

時には面倒な仕事にも文句を言わず取り組んで、誰よりも早く出勤して、丁寧に資料を整えて。

全部、課長の「ありがとう」と「助かったよ」が欲しかっただけ。

それだけで、どれだけ救われてきたか。

でも、もうすぐ終わる。

それが現実だった。
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