契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
「はぁ……」

湯に肩まで沈みながら、小さくため息を吐く。

儀式だけの初夜。

心も、言葉も交わさず、ただ体を重ねるだけの夜。

――そこに、愛も情もあるはずがない。

「……ううっ……」

気づけば、涙が溢れていた。

せめて、泣くくらいは許されたい。

「うわわわん……!」

誰もいないと思って、声を殺さずに泣いた。

情けなくて、惨めで、でもどうしようもなくて――

そのときだった。

がらっ――

突然、風呂場の扉が開いた音がして、私は振り返った。

そこには、濡れた髪を後ろに払ったままの、裸の圭一郎さんが立っていた。

一瞬、時が止まった。

「……っ!」

私はあわてて胸元を隠し、湯に沈む。

「な、なんで……っ!?」

動揺する私をよそに、圭一郎さんは湯気の中で無表情のまま言った。

「ここ、俺の風呂なんだけど」

あまりに当然のように言われて、私は返す言葉を失った。

心臓の音がうるさいほど鳴っている。
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