契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
近くて、やさしくて、胸が締めつけられる。

さっきまで、涙が止まらなかったのに。

――もしかして、慰めに来てくれたの?

私が泣いていたから? 心配して……?

どうして――この人は、こんなときだけ優しいの?

心が不意に、じんと熱くなった。

そして私は、まだ背を向けたまま、湯に浮かぶ自分の手を見つめていた。

その手を、あの人は……これから、取るのだろうか。

身体だけの夫。

でも、もしかして――ほんの少しだけ、心があるのかもしれない。

湯船から上がり、私は用意されていた白い布でそっと体を拭いていた。

肌に触れる絹の柔らかさとは裏腹に、胸の奥はまだ落ち着かない。

そのときだった。

「じっとしてろ。」

圭一郎さんの声がして、私はびくりと肩を揺らした。

そして次の瞬間、彼の手が、私の背中にふれた。

「え……」
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