契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
振り返る間もなく、圭一郎さんは、自分の布で私の背中を静かに拭っていた。

優しく、ゆっくりと――まるで、触れることに迷いがあるかのように。

「……ありがとうございます。」

言葉にすると、声がわずかに震えた。

こんなふうに背中を拭いてもらうなんて、生まれて初めてだった。

その手が布を離れたと思った次の瞬間、私は、後ろからそっと、けれど確かに抱きしめられていた。

「あ……」

広い胸に、背中が包まれる。

熱を帯びた肌同士が触れ合い、心臓の音が急に早くなる。

「……できるだけ、大切にする」

その言葉は、まるで自分に言い聞かせるように低く、静かだった。

「……はい。」

私は、小さく答えた。

頬が熱いのは、湯上がりのせいじゃない。

――本当は、この人、優しい人なの?

問いかけかけた言葉が、思わず唇から漏れる。

「あの……」
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