契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
「そう……」

たった一晩だけ、夫婦らしく寄り添った人。

その人は、まるでそれが“予定のひとつ”だったかのように、朝には姿を消していた。

――結婚式の時だけ、休みを取ったのかもしれない。

私は桶の水で顔を洗った。

ひやりとした水が、重たいまぶたに沁みて、少しだけ目が冴えた。

けれど体を起こすと、腰の奥に鈍い痛みが走る。

「……っ」

思わず顔をしかめたその様子に、侍女がすぐそばに寄ってきた。

「無理をなさらないで。昨日は――初夜でしたからね。」

そう言って、私をそっと寝かせなおしてくれる。

「今日は何もなさらず、ゆっくりお休みくださいませ。」

柔らかな声に、私は小さく頷いた。

初夜――その言葉に、胸の奥がじんと痛んだ。

体の痛みよりも、心の方が重たいのは、どうしてだろう。

圭一郎さんの言葉も、手のぬくもりも、全部が幻だったような気がして。
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