契りの花嫁 ~冷たい夫が、私に恋をした日~
だからこそ、言葉の一つひとつが冷たく感じられた。

私は唇を噛み、静かに口を開いた。

「……せめて、着物だけ用意させてください」

「着物?」

「金糸の打掛を着て、結婚式を挙げるのが……私の、夢なんです。」

それは幼い頃、母が見せてくれた婚礼の絵巻の記憶だった。

白無垢に金糸が輝く花嫁姿に、少女だった私は心を奪われたのだ。

――夢くらい、見たっていいでしょう。たとえ、愛のない結婚でも。

沈黙が落ちた。

圭一郎さんは少しだけ、私を見た気がした。

「こちらで用意しよう。」

「……えっ?」

思わず問い返すと、彼は椅子から立ち上がりながら、淡々と付け加えた。

「支度金に上乗せされたくないんでね。」

――支度金。

その言葉に、胸の奥がずきりと痛んだ。

やっぱり私は、金で買われる存在なんだ。

夢だったはずの婚礼衣装すら、“値段”の一部になる。
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