クロネコメール

彼が最後の言葉を口にさた瞬間、黒猫は彼の腕からするりと降りて、さっき出てきた草むらへと姿を消した。




彼は黒猫のしっぽが見えなくなったのを確かめると、一度頷いた。




初めてだ。

友達でもない人、しかも初対面で名前すら知らない人に、告白の手伝いをしてもらうなんて。

あっ、普通ないか。


「協力してくれるのは嬉しいんだけど、まず名前を聞いていい?あたしは、碧槻莎緒(あおつきさお)」

「俺は、黒橋颯葵(くろばしさつき)」


聞いたことがないなぁ。


カッコいい人の名前はある程度知ってると思ったのに。

「そろそろ授業始まるから、また昼休みにここに来て」

彼は腕時計を見ながら言った。

後2分くらいで始まっちゃう。


「わかった」

そう返事をすると、黒橋くんは身を翻し、自分の教室へ戻って行った。




あ、黒橋くんって特進科なんだ…



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